2015年7月13日月曜日



『 本物 』

あんたは貧しく生きると決めたんだ
貧乏を選んだんだ
オレは選んだんじゃない
あんたは貧乏に甘んじてる。
オレはできない。
あんたは望みさえすれば
明日にも金持ちになって
ラジオだって手に入る。
だが、オレは一生かかって望んだって
どうにもできない。
オレはどんなにがんばったって
貧乏から抜け出せない。
盗みでもしない限り
ラジオを手に入れられない。
オレの貧乏は本物だ
あんたのは違う。

    ” EBOLA ”

2015年7月7日火曜日




『気まぐれ』
 
ここは、慎重に事の成り行きを
見極めなければ。
結局は大衆の気まぐれで
芸術の新しい世界観や価値観を
葬り去ることだってある。
戦に大きく舵を切る事だってある。
わたし?
私は誰からも興味を持たれない日々が
長かったものですから、すっかり権威に
阿る術を忘れてしまいまして。








『悪そうな善人』

昔見た絵画で舌先が二つに割れ
牙をむきだし、すごい形相で
睨みつけるドラゴンに
勇猛果敢に立ち向かう戦士。
どう見ても、正義の戦士が悪のドラゴンに
立ち向かうように見える。
しかし、何か腑に落ちない
戦士が聖者に見えず、
ドラゴンに同情してしまう。
実際、立ち位置で世界はまるで違ってくる。
さえない新聞記者の超人や、
美女に愛される野獣。
結局、いいことをする泥棒。
働き者のナマケモノだっているかもしれない。
想像を裏切られる心地よさがそこに。
話の本筋からは外してしまったね。
本質に触れると、
とても長くなるので日を改めて。








2015年5月25日月曜日


『境界線』

目の前の出来事が
頭の中の引き出しを開く
思いもよらぬ記憶や知識とを
自分の中の何かが繋ぎつける。
これが「センス」。
それは時として軽やかに境界線を
超えることもあれば、どういうわけだか
二の足を踏み続けることもある。
長く生きていれば引き出しは増える
しかし、それを繋ぐものは、
いかんともしがたい。





2015年5月17日日曜日



『生命の条件』

生命というものは
物質が安定するところには生まれない。
エネルギーが流れ、物質が
変化し続けるような状況で
はじめて生命は成立する。
すべてが平衡に達してしまうと
それはすべての死を意味する。








『孤独な旅人』

1977年に打ち上げられたボイジャー1号は
木星、土星と飛び続け2012年故郷となる
太陽系を離れ、今も6万1400kmの
速さで航行している。
この孤独な人工物は
燃料が2025年頃には無くなってしまうが
69.63KBの小さなメモリーの
コンピューターを積んで
ひたすら孤独な旅を続ける。
暗黒の空間を飛び続け
次に一番近い恒星にたどりつくのは
7万3000年後の予定。
                        ふと、夜空を見上げる。

2015年3月29日日曜日



『身を委ね待ちわびる。』


人間は物体が本来持つ絶対的な大きさを知ることはできず
わかるのは他の物体と比較したときの相対的な大きさだけだ。
時空を含め、何もかもが相対的な存在だとすると
私たちは堂々巡りに陥ってしまう。
ライヘンバッハはこう書いている
”どうやら時空の問題の解決は、ライプニッツのように
数学者である哲学者か、アインシュタインのような
哲学者である数学者に委ねられているようだ”


2014年10月3日金曜日


『 白い影 』






横たわり眺めるのは光の向こう。
影が創りだす自身の形。

『人間には自らの起源たる無も見えなければ
自らを包み込む無限もまた見えない。』
                            blaise pascal       

2014年9月13日土曜日


『 名前 』





そもそも、何なんだ?
この得体のしれないものは。
ん?
知ってるの?
えっ?
そんな名前なの。
なんだ
意外とかわいい名前だね。
      「 ・・・・・ 」
いやいや、名前がわかっただけで
得体はしれないままじゃないか。
あやうく、知った気になるとこだったよ。


















2013年12月1日日曜日

『帰り道』






こんな話がある。
寒さは暑さより危険で
つまようじは雷よりも危ない
歩行者は火事より、ベッドは梯子より
ヘビはテロリストより
可燃性のパジャマは蜂に刺されることより
ココナツはサメより危険である。
いつもの帰り道、ちょっとだけ
何かが動いた。

2013年11月5日火曜日

『富豪と医者』




病室の富豪が執事にお金を渡し「あの医者に届けよ」と。
執事の「病が完治してからでもいいのでは?」との問いに
富豪は「死の淵、助けてくれるなら全財産を渡してもいいと思った。」
次に、「治るなら財産を半分やってもいい」と。そして
快方の今「医者は病を治すのが仕事」と思い始めている。
だからいま、このベットから起き上がる前に・・・。

                         ”ラジオから流れてきた物語より”

2013年7月15日月曜日

『滅びの世界』





此処にいた我々の祖先は
自ら命を絶ったそうだ。
そう、まだ「心」の場所が
わからなかった時代の話だよ。
今も昔も、人間てのは
要らなくなれば捨てたくなる。
隙間があれば開けたくなる
引き金があれば引きたくなる
赤いボタンがあれば押したくなるものなんだよ。
理由なんてそんなところさ。

2013年5月10日金曜日




『ロードランナー』

いつの日か、ワイル・E・コヨーテは
勝利を収めることになるだろう。
もしそうなったとしたら、それは
彼が鶏肉のサンドイッチを
食べたかったからではなく
燃え盛る欲望を身の内に
抱えていたからである。
彼はその代価を支払うことになる。
何マイルも何マイルもひたすら
走り続けることになる。
そしてある日、彼は
正しいプランを発見するだろう
きっとそうなるはずだ。

                Tom  Jones



2013年4月16日火曜日

『一匹の修羅』



アリョーシャは  
行き場のない怒りに身を震わせている
リリーは
裏切られたことをまだ
受け入れられないでいる。
旅人は
悪気のない親切に振り回され
舞台では悪意に満ちた喝采を受ける。
そんな冷徹な賭けの日々に
ルシュニアモフは
戻る決意をした。
そう、ほかならぬ愚行の連鎖に
今なら戻れる気がした。





2012年11月30日金曜日

『遠くの出来事と近くの小枝』




裏切りと策略、欲望が底をなくし
見え透いた表向きのコメントに
声を上げるのも疲れつぶやく。
そんな出来事など
知るすべもなく。
彼女は今日も火を熾すため
枝を集める。
きっと頭のいい人たちが
隣村との殺し合いを止め
もっと近くに飲み水の汲める
場所が現れ、下の子の病を
たちどころに治してしまう、
そんな明日を思いながら。



2012年11月25日日曜日

『暗がりに立ち尽くし見える』



何をやっても駄目なリコ。
周りからはいつも、
ダメな子だと蔑まれ。
さらにダメなふりをして笑い飛ばす。
おりこうさんのヌーノ。
周りからは
「がんばりやさんねぇ」と決めつけられ
それに応えようと、無理して頑張る。
ずば抜けた才能のボリノ。
周りの腫れものを触るかのような
一人ぼっちの扱いの日々に、
小さくつぶやく。

2012年10月14日日曜日

『募り積もる』



満足のいく日々など
とうの昔に置いてきた
多くの失敗と
取り返しのつかないことを
背負い前を向く。


2012年9月23日日曜日

『 帰還 vamacular 』





私のこの宇宙船の生活のような日々は
もはや、行き着いた果てに立ち尽くしているようだ。
大半が、逆らう煩わしさより
体制の正義にひれ伏す容易さを選択
それが正しいのだと信じて生きてきたのに
モニターからは乾いた色で
遥か昔の乱世の時代劇。はき捨てるよう
役者がつぶやく




”正しすぎるということは
もはや間違っていることと
同じではござらぬか。




















2012年8月26日日曜日

『カエルの子はおたまじゃくし』




やっと足のはえてきたおたまじゃくしが
見上げた先には
艶だったウグイス色のカエルが
しっかりと葉にしがみつき
オレンジ色の大きな目で獲物を狙う姿。
『カッコイイ!!』と思った。
早くカエルになりたいと
心底、思った。

2012年8月13日月曜日

『赤るいほう』




漁師の叔父が小さな俺を
かわいがってくれたのも
祖母がそうであったのも
実の子や孫が近寄らなかった
寂しさを紛らわすためと
ふと、感じ取ったとしても
目を閉じて、まぶたの裏の
赤い景色に隙間の光をまぶして
「ありがとう。ありがとう。」

2012年8月5日日曜日

『心象の深層の真相』



思い出に境界などない
現実に体験したことはもとより
夢で見たときの鳥肌や苦みまで
よく冷えたグラスにほうり込み
時(とき)のマドラーにてよくかき混ぜると
もう、なにがなんだか。。。
すべてが本当の出来事に。

2012年7月21日土曜日


『融けた蝋細工の羽』



手に余る怪物を
まだ、手なずけられると思っているのか。


2012年7月11日水曜日

『問題が問題





白い布にくるまれ
深い深い海の底へ
答えは出たのか
欲望に必要なものは「渇き」
探していたのは、答えなのか
それとも、答えてくれる人? 


2012年6月24日日曜日

『老魚の旅立ち』

「なにもいまさら 行くことはないのに。。」
仲間や子どもたちは口々に彼を引き留める。
それでも老魚は目の前の水面に顔をつけ
体を滑り込ませ、遥かなる大海の向こうを睨みつけた。
村人の心配と嘲笑と諦めをよそに、老魚は村を離れた。
くりかえす。
とてつもない不安と希望を抱え
漆黒の闇のなかへ消えていった。




静かな日常が戻った村には
諦めた空気と、ほのかな明日が残った。



2012年6月10日日曜日


『煌々』


破壊的なことがむしろ諦めと希望の始まりとする。
罪悪感を背負いながら。
自ら創るまばゆい光にあらがいながら・・・「それもまたそれ」と。

2010年11月25日木曜日

『どうしてそんなこと言うのよ』

『私はあなたが考えているより ずっと深く混乱しているのよ』
                   (ノルウェイの森 村上春樹)

もぎとられたものをもぎとれ

不言実行信奉者や経験主義の一方的な現実論に、
道半ばで、もぎ取られた背中の羽。
もし、まだ、根が残っているならば、
     『もぎとられたものを、もぎとれ』

2010年11月24日水曜日

ファンタジーの終焉

たとえ、恋に恋焦がれ、
愛に愛されるファンタジーに終わりが来ようが、
リアリズムに『希望』と言う名の血を
流し続ける。

2010年10月26日火曜日

『酒癖』

大正生まれの親父はとにかく酒癖が悪く、手がつけられなかった。
親からもらった『清保』という名前を戦後、
こんな世界で清く生きられるかと自分で臨機応変の『臨』に変えた。
俺は今でも親父が死ぬまで酒癖が悪かったのは
戦争のせいだと思っている。

2010年10月15日金曜日

時を窺う水溜りと穴

力線が胚の表皮の表側に接触した瞬間、その先端部にみるみる水がたまり始める。
『眼球』である。
水の眼を中心にして顔が作られる。顔には眼ばかりではなく、鼻や口や耳など
いくつもの穴がうがたれ、それらの水の眼や穴は感覚器官として、じっと、まだ見ぬ
外の世界をうかがっている。

2010年9月23日木曜日

ジェララバードにて。


汗まみれの臭い体を洗いたかった。
銃声の鳴り響く、穴だらけの部屋で 
トイレの隅に置かれたドラム缶に溜められた水を汲んだとき
石鹸をトイレの穴に落としてしまった。
躊躇していた手が穴に伸びていた。
取り出した糞まみれの石鹸を洗い
その石鹸で体を洗った。    『とにかく、身を清めていたかった』

2010年9月18日土曜日

ベルタ・キンスキーからの便り(習作)

270万発の銃弾。6万発の砲弾。2万発のロケット弾。3000万発の機関銃の弾。
もう彼女は終戦なんてどうでもよかった。
あとから平和が来ても、彼は帰ってこないのだから。
もぎ取られた羽を取り戻そうよ。
いずれ、世界中の兵器の火薬を花火にしてやるんだ。
そしてその時、僕らはやっと、アルフレッドにノーベル賞をあげることになるんだ。

2010年8月1日日曜日

影法師


学者はその賑わいを聞くことは無かったのです。なぜなら、彼はすでに自分の影に命を奪われていたからです。

2010年7月24日土曜日

茶釜Ⅱ

さいの目に切り刻んだ採れたての罪悪感を
ぐつぐつと煮えたぎる大鍋の中へ入れて、よく茹でた後
目の細かい網で掬い取り、水をよく切ってください。
あとに残るのは、『君だけ』

2010年7月3日土曜日


僕は声を荒げ僕の思いのたけを君に叫ぶ
君は震える声で僕に胸のうちを語る
君の顔が僕になる    僕の顔が君になる

2010年5月22日土曜日

1993年のつぶやき。

BOUNDARY DANCE

REAL DANCE
僕らはいずれ地球に終わりが来ることを悟っている。何となくその時は、新しい生活地を探す旅に出ると思い込んでいるが、はたして、地球上にいる人間のどれくらいが現実に終焉を迎える場において、地球を捨て違う星へ向かう気になれるだろうか。・・・僕は地球と一緒に終わるつもり。(1993年のメモより)

2010年5月10日月曜日

環境の力学

『目的もなく生まれ落ち、意味もなく生活を送り、死ぬとき、ただ消え失せてゆく』。こうした環境のもとでは
人は天才にならざるを得ない。さもなければ、威厳に満ちた部屋の、鍵をかけたドアの背後で、
クスクス笑って一生を終えるのだ。

2010年4月29日木曜日

愛のない毎日は自由な毎日

人間は良心の自由などという重荷に堪えられる存在ではない。私たちはたえず自分の自由とひきかえにパンを与えてくれる相手を探し求め、その前にひれ伏すことを望んでいるのだ。

2010年4月28日水曜日

ジョーク好き


虹が身を引き剥がそうとしている大地から、軽やかに離れ姿を変える。ジョーク好きのそれは、憎くもあり愛しくもある。